北村忠はそのまま木村文俊を見つめ続けていた。
木村文俊は目の前の女性と楽しそうに話をしていたが、その時、何か敵意のある視線を感じ取り、振り向くと北村忠の姿があった。
パーティー会場で彼は既に北村忠を見かけていた。
東京の有名な財閥グループといえば、あの数人は目立つ存在だった。
彼は目の前の女性に何か言い残すと、立ち上がって北村忠の方へ直接歩み寄った。
北村忠は眉をひそめた。
その瞬間、どこか戸惑いを感じた。
次の瞬間、背筋を伸ばした。
何もしていないのに、なぜ後ろめたく感じる必要があるのか。
木村文俊は北村忠の前で足を止め、率先して挨拶をした。「北村さん。」
北村忠は彼を見つめ、率直に尋ねた。「さっきの女性は誰?」
木村文俊は軽く笑って答えた。「クライアントです。私のデザインが気に入ったと言って、少し話が弾んだだけです。」