第179章 陰謀(5)真実の誕生

行ってしまった。

行ってしまった!

北村忠は黙って目の前の光景を見つめていた。

周りの人々は依然として彼を見つめていた。

その瞬間、自分が笑い者になったような気がした。

彼は目を拭った。

くそ!

本当に泣いてしまった。

冬木心のためなら、自分が最も嫌な姿にまでなれるなんて!

明らかに、婚約破棄は既に決めていたことで、ただ冬木空の結婚式を待っていただけだった。今夜は本当はもっと潔く、木村文俊に冬木心を愛していないと、婚約破棄は誰のためでもなく、ただ飽きただけだと言えたはずだった。

しかし最後には。

意地悪く木村文俊を気持ちよくさせたくなかった。

木村文俊と冬木心を幸せにさせたくなかった。

そして今。

ついに、ついに冬木心にもっと嫌われることになった。

いや。

もっとというほどでもない。