行ってしまった。
行ってしまった!
北村忠は黙って目の前の光景を見つめていた。
周りの人々は依然として彼を見つめていた。
その瞬間、自分が笑い者になったような気がした。
彼は目を拭った。
くそ!
本当に泣いてしまった。
冬木心のためなら、自分が最も嫌な姿にまでなれるなんて!
明らかに、婚約破棄は既に決めていたことで、ただ冬木空の結婚式を待っていただけだった。今夜は本当はもっと潔く、木村文俊に冬木心を愛していないと、婚約破棄は誰のためでもなく、ただ飽きただけだと言えたはずだった。
しかし最後には。
意地悪く木村文俊を気持ちよくさせたくなかった。
木村文俊と冬木心を幸せにさせたくなかった。
そして今。
ついに、ついに冬木心にもっと嫌われることになった。
いや。
もっとというほどでもない。