深夜2時過ぎの病院。
辺りは静寂に包まれていた。
ましてや集中治療室のエリアは、蠅一匹も飛んでいなかった。
根岸史子はそこに一人きりで、彼女は自分が一人きりだと感じていた。集中治療室の中で一人。
今、彼女の前で微かに呟いている鈴木山については...まあ、もうすぐ人ではなくなる、少なくとも、息をする人ではなくなるのだから。
彼女は続けて言った。「あなた、私がなぜこうしたのか知りたい?なぜあなたに近づいて、なぜあなたの前妻を殺してあなたに近づいたのか。知らないまま死ぬのは心残りでしょうね。でも残念...」
根岸史子は不気味な笑みを浮かべたが、鈴木山の近くにいたため、誰も彼女の歪んだ表情を見ることはできなかった。
彼女は一字一句はっきりと言い放った。「残念だけど、教えてあげないわ」
鈴木山は動かなかった、相変わらず動かなかった。
根岸史子は冷笑した。「幼い頃からの訓練で教えられたの。死にかけの人に対してでも、死人に対してでも、隠すべきことは決して口にしてはいけないって。命令を受けた瞬間から、すべてを腹の中に秘めておかなければならないの!」
根岸史子は少し間を置いて、ゆっくりと続けた。「でなければ、そうでなければ、きっと話していたわ。どんなことがあっても、これだけ長く一緒に寝食を共にしてきて、目の前であなたが死んでいく様を見て、この私の手で死なせることになって、私だって後ろめたさは感じるわ」
後ろめたさを感じると言いながら。
根岸史子の口調からは、それが微塵も感じられなかった。
むしろ得意げに、傲慢に笑っていた。
「知ってる?これからは二度と、二度とあなたに汚されることはないのよ!」根岸史子はあなたという言葉を口にする時、鈴木山との過去の親密な関係を思い出したのか、顔中に嫌悪感を浮かべた。
彼女は言った。「でも、死ぬ前に、死ぬ前に、最後にもう一度キスしてあげるわ」
根岸史子はそのまま彼を見つめ、しばらく見続けた。
ゆっくりと
彼女は鈴木山の肩に顔を埋めた。
その姿は、まるで甘えているかのように、まるで愛し合う夫婦の、とても自然で甘い仕草のように見えた。
しかし実際は、根岸史子はこの動作を利用して、誰にも気付かれないように服の中から極小の薬丸を取り出し、後ろの監視カメラにも映らない位置で、こっそりと自分の口に入れたのだった。