重症監視室。
北村忠は急いで病院に到着した。
キャップを深くかぶっていたため、誰にも気付かれなかった。
彼は直接重症監視室の方へ向かった。
監視室の外には誰もおらず、透明なガラス越しに恐ろしい光景が目に入った。
根岸史子は狂ったように鈴木山の首を絞めており、殺そうとしていた。
やはり。
やはり根岸史子はこんなにも悪い人間だった。
彼は一瞬の躊躇もなく中に飛び込んだ。
根岸史子は重症監視室のドアが大きな音を立てて開いたことにも気付かず、ただ鈴木山を殺して全てを終わらせることだけを考えていた。
しかし、成功したと思った瞬間、突然体を引っ張られた。
力が強く、抵抗できないまま床に投げ出され、重症室の床に激しく叩きつけられた。
その衝撃で全身が痛み、目の前が霞んでしまった。
北村忠はその時、根岸史子のことは気にせず、すぐに鈴木山の元へ駆け寄った。「鈴木おじさん、大丈夫ですか?」
鈴木山は激しく咳き込んでいた。
喉が痛く、大きく呼吸を繰り返し、咳のせいで顔が真っ赤になっていた。
北村忠は彼の様子を見守っていた。
徐々に落ち着いてきたように見えた。
しかし、床に投げ出された根岸史子が、いつの間にか立ち上がり、重症室にあった何かの医療機器を手に取り、北村忠の頭めがけて振り下ろそうとしているのに気付かなかった。
鈴木山がそれを見て、急いで叫んだ。「後ろに気を付けて!」
北村忠はその時、避けることもできたはずだが、避ければ確実に鈴木山に当たってしまう。
彼は歯を食いしばり、耐えるしかなかった。
その瞬間、彼の頭から真っ赤な血が流れ出した。
恐ろしい光景だった。
北村忠はその時、死ぬかもしれないと思った。
目の前が何度も何度も暗くなった。
それでも鈴木山を押しのけることを忘れなかった。
鈴木山はベッドから転がり落ちた。
布団のおかげで怪我はなかった。
北村忠は痛みをこらえながら、振り向いて根岸史子の腕を掴み、彼女の手から機器を落とそうとした。
根岸史子の腕力は凄まじかった。
北村忠は、根岸史子の本当の力が分からなくなった。
一人の女性が、こんなにも強い力を持てるものなのか?
限界があるにしても、ここまでとは。
幸い。
北村忠は実際に訓練を受けていた。
冬木空に強制されて、かなりの訓練をこなしてきた。