目の前は、真っ赤な炎に包まれていた。
鈴木知得留と冬木空は、目の前の光景をただ見つめていた。
次の瞬間、鈴木知得留は何も考えずに車のドアを開けた。
「鈴木知得留!」冬木空が手を伸ばした。
その時、鈴木知得留は既に車から降り、パトカーの方向へ走り出していた。
パトカーの中の警察官たちは、必死にガラスを割って脱出し、地面を転がって体の火を消そうとしていた。
しかし、中にいた根岸史子は、まったく抵抗する様子を見せなかった。
彼女はパトカーの後部座席に座り、歪んだ表情で目の前の炎を見つめ、まるで痛みを感じないかのように、自分が焼かれるままにしていた。
鈴木知得留は歯を食いしばり、炎の中へ飛び込もうとした。
根岸史子をこのまま死なせるわけにはいかない、このまま無駄死にさせるわけにはいかない。
まだ聞きたいことが山ほどある、知りたいことがたくさんあるのに!
村上忠や根岸佐伯のような目に遭うかもしれないと予想はしていたが、こんなに早く、こんなに早く行動に移されるとは思わなかった。
前に進もうとする鈴木知得留の体が、突然誰かに引き止められた。
「冬木空、私は諦められない、行かなきゃ……」鈴木知得留は感情的になっていた。
ここまで来て、もうこれ以上手をこまねいているわけにはいかなかった。
そして今、黒幕の正体を知り、家族の危機を解決できる唯一の手がかりは、根岸史子だけ、彼女しかいない!
彼女はきっと多くのことを知っているはずだ。
鈴木知得留は、田村厚でさえ知らないことを、根岸史子は全て知っているのではないかと感じていた。
根岸史子を死なせるわけにはいかない!
「わかっている」冬木空の声は断固としていた。
彼は彼女の考えを理解していた、全ての考えを。
「俺が行く」冬木空は鈴木知得留に反論する時間を与えなかった。
その瞬間、パトカーに向かって走り出した。
パトカーの火勢は激しかった。
冬木空が近づいた瞬間、突然爆発音が響いた。
「冬木空……」鈴木知得留は驚愕した。
彼女は、冬木空に自分のためにこんなことをしてほしくなかった。