冬木グループ総経理室の外。
秘書のそんな大げさな反応に鈴木知得留の顔が赤くなった。
彼女は北村忠をちらりと見た。
北村忠は魅力的な笑顔を浮かべ、「旦那様が特別に私に出迎えを頼まれたんです」と言った。
鈴木知得留は珍しく北村忠と言葉を交わし、道明寺華を連れて冬木空のオフィスに入った。
これが初めて冬木空の領域に足を踏み入れる。
彼も出勤して間もないのだ。
冬木空のオフィスは広いが、とてもシンプルで、彼は複雑なものを好まないようだ。
彼は椅子に座り、鈴木知得留が彼のオフィスに近づいてくるのを見ていた。
「来たね」
鈴木知得留は頷き、直接冬木空の方へ歩いていった。
冬木空は彼女に向かい合わせの椅子に座るよう促した。
鈴木知得留はそこに座った。
道明寺華は鈴木知得留との付き合いで息が合うようになり、おとなしく冬木空のオフィスの片隅のソファに座り、暇つぶしにスマートフォンを取り出してゲームを始めた。
北村忠も邪魔者扱いされたくなく、ソファに座り、道明寺華から近すぎない距離を保ちながら、同じくゲームに没頭した。
鈴木知得留は手に持っていたティーカップを冬木空に渡し、「これは父のお茶です」と言った。
冬木空はそれを受け取り、頷いて「できるだけ早く結果を出す」と言った。
「今、少し不安なんです」鈴木知得留は心配を打ち明けた。
「怖がらないで。もしこのお茶に本当に問題があるなら、それはむしろ良いことだ。どちらにしても、少なくとも父上の健康は守れる」
「一体誰が、こんな大がかりな計画を、こんなに長期間にわたって仕掛けているのか、一体何が目的なんでしょう!」鈴木知得留は不安を隠せなかった。
「いつかは真相が明らかになる日が来る」
「冬木空、今このお茶を調べなくても、何か問題があるような気がします。来る途中でいろいろ考えたんです。考えれば考えるほど、村上忠には不自然な点がいくつもあるように思えます」
「話してください」冬木空は静かに聞き入った。
「まず一つ目は、根岸佐伯が亡くなった時、村上忠が家に来て父を呼び出し、根岸史子に後片付けの時間を与えるため、二人きりにしたことです」
冬木空は頷いた。