部屋の中。
冬木空は目を開けた。
「きれいだった?」彼は磁性のある声で尋ねた。
なんで、こんなに心臓がドキドキするの!
何もしていないのに、確かに何もしていないのに。
なぜこんなに後ろめたい気持ちになるの。
ただ、美しい姿を覗き見しただけなのに。
恥ずかしい……
そうしたら。
ドアの方から突然声が聞こえた。「確かに綺麗だけど。でも彼の体調が良くないから、起きたら早く出てきて、何か食べて体力をつけなさい。」
鈴木知得留はその瞬間とても気まずく感じた。
私は一体何をしたの?
まるで私が……淫らな女みたいじゃない。
体力つけるって何よ!
冬木空は地面に潜り込みたいほど恥ずかしがる知得留の様子を見て、特に魅力的な笑みを浮かべた。
彼は言った。「起き上がるのを手伝ってくれないか。」
知得留は布団から起き上がった。
同じ布団の中にいたとはいえ、彼女は確かに冬木空に触れることさえ恐れていた。
そう思うと、なんだか悔しくなった。
本当に何もしていないのに!
むしろ距離を保って、これ以上ないほど純潔だったのに。
知得留は慎重に冬木空をベッドから起き上がらせた。彼の体に触れないように、傷に触れないように気を付けながら。
冬木空は一見普通そうに見えたが、起き上がった瞬間、少し動きを止めた。
彼は言った。「パジャマを取ってくれないか。」
「着替えると傷に触れませんか?」知得留は尋ねた。
「裸で歩き回るのは好きじゃないんだ。」冬木空は答えた。
お兄さん、あなたは全身包帯でぐるぐる巻きなのに、どこが裸なのよ!
この人の考え方は古すぎるんじゃない?
知得留は冬木空のパジャマを取りに行き、苦労して着せてあげた。そして二人一緒にベッドから降りて、寝室を出た。
リビングでは、オープンキッチンの方で、塩川実がお粥を作っていた。
この距離でも、食欲をそそる香りが漂ってきた。
知得留は本当にお腹が空いていた。
おそらく冬木空もそうだろう。
時計を見てようやく気づいたが、もう昼時だった。
知得留は冬木空を窓際のダイニングテーブルまで支え、食事を待った。
知得留も冬木空の隣に座り、ふと思い出して、「華はまだ寝てるの?」
塩川実に尋ねた。
塩川実は頷いた。「北村と、あなたのボディーガードもまだ寝ているはずです。」