斎藤咲子は冬木郷の車のテールランプの方向を見つめ続け、ライトが消えても、なおそこに立ち尽くしていた。
冬木郷の言う通りだった。
彼らは確かに婚約者同士の関係だった。
当時、斎藤グループが商業管理部の海上引流プロジェクトの入札に参加しようとした際、冬木空が彼女を助けた。その時の協力内容は、冬木家が全面的に資金を出して入札を手伝い、入札書類も作成してくれるというもので、唯一の条件は、彼女が冬木郷と婚約することだった。
彼女は承諾した。
その瞬間、躊躇いはなかった。
彼女にとって、斎藤グループを手に入れられるなら、どんな条件でも受け入れるつもりだった。
協力は即座に成立した。
冬木空は婚約の件は当面公表しないようにと言い、タイミングが来たら発表すると、何か考えがあるようだった。