冬木空には女友達がいた。
これは火星が地球に衝突するようなことだ。
彼女は信じられなかった。
鈴木知得留は全く信じられない様子で彼を見つめた。
冬木空は言った。「パソコンが得意なんだ」
「女友達がパソコンが得意?」
「うん」
「ゲームが好きなの?」そんな風には見えないけど!
「ゲームじゃなくて、ハッカーだ」冬木空は説明した。
くそっ。
そんな高度な職業を、パソコンが得意とか言うなんて。
「それで?」
「技術者だし、性格もいいから...」冬木空は言った。
「どんな性格?」鈴木知得留は彼の言葉を遮った。
「無口で、笑わなくて、引きこもり気味」
なるほど。
冬木空の目から見れば、自分の性格は最悪なのかもしれない。
「だから友達になったの?」鈴木知得留は尋ねた。
「うん。周りにパソコンが得意な人がいなくて、北村忠が彼女はいい人だと言ったから、付き合うことにした」
「きれいなの?」女性が一番気になるのは、いつもこれだ。
「きれいだよ」冬木空は答えた。
鈴木知得留は疑わしく思った。
技術者で、無口で、笑わなくて、引きこもり気味で、しかもきれい?!
そんな女性は絶滅しているはずでは。
「私はきれい?」鈴木知得留は冬木空に尋ねた。
彼の審美眼を確認しないと。
「うん」冬木空は答えた。
「道明寺華はきれい?」鈴木知得留は更に尋ねた。
「道明寺華は女性として数えるの?」
よし。
少なくとも女性の特徴は判断できるようだ。
「冬木心はきれい?」鈴木知得留は再び尋ねた。
「うん」冬木空は頷いた。
「私と冬木心、どっちがきれい?」鈴木知得留は真剣だった。
「君がきれい」
「冬木心とその女友達、どっちがきれい?」
「女友達」
鈴木知得留は冬木空を睨みつけた。
「君が一番きれい」冬木空は結論付けた。
これは単なるお世辞ではなく、客観的な評価だった。
だから。
冬木空の審美眼は問題ない。
だから、その女友達は本当に醜くない、むしろ、とてもきれいなのだ。
なぜか急に胸が苦しくなった。
彼女は言った。「どうして後で友達じゃなくなったの」
「彼女が私のことを好きだと言ったから」
鈴木知得留は彼を見つめた。
「それ以来、連絡を取っていない」冬木空は率直に言った。