結婚式会場。
秋山静香は花のような笑顔で、冬木空に向かって「おめでとうございます」と言った。
冬木空は目を僅かに動かし、軽く頷いた。
以前と同じように、相変わらず冷たい態度だった。
秋山文雄は冬木雲雷との挨拶を終えたようで、娘に向かって「中に入ろう」と声をかけた。
秋山静香は微笑んで、父親と共に披露宴会場へ入っていった。
北村忠は静香の後ろ姿を見つめ、冬木空の方を振り返って「彼女の身分、前から知ってたの?」と尋ねた。
冬木空は首を振った。
「ただのお嬢様だと思ってた」と北村忠は呟いた。
冬木空は特に表情を変えなかった。
北村忠は、鈴木知得留以外の女性は冬木空の関心を引くことはできないのだろうと感じた。
このまま冬木空と共に来賓の接待を続けていた。
突然、北村忠の電話が鳴った。
着信を確認して「はい」と応答した。
「北村さん、私よ、静香」
「静...」
「シーッ」向こうから甘い声が聞こえた。「私、会場の右側で待ってるから、ちょっと来て。冬木空には内緒よ」
北村忠は接待中の冬木空を振り返り、そっと離れた。
彼は優美で豪華な披露宴会場に入った。ここは冬木空が一手に装飾を手がけたもので、誰が入っても圧倒されるほど、広大な会場が花の海と化していた。
今は周りの美しさを楽しむ余裕もなく、大股で待っている秋山静香の元へ向かった。
秋山静香は今日、ピンク色のプリンセスドレスを着ていた。彼女は皆より年下で、高い知能のおかげで16歳から大学に通い始め、彼らが静香と知り合った時、彼らは22歳で静香は18歳、今でもまだ21歳だった。今、ふんわりとしたドレスを着て、まるであの18歳の頃のように見えた。
彼女は誰に対しても冷たかった。
しかし、冬木空に出会うまでは。
以前はドレスを着ることも、おしゃれをすることも、人と話すことも好まなかったが、冬木空を好きになってから変わり始めた。
今回の再会で、以前とはまた大きく違っているように見えた。
秋山静香は北村忠を見て、明るく「こっちよ」と声をかけた。
北村忠は彼女の前に立ち、率直に尋ねた。「この数年、どこにいたの?」