第216章 事故勃発（1）冬木空に異変

鈴木邸。

鈴木知得留は冬木空とLINEでチャットしていた。

父の鈴木山が突然帰ってきた。

鈴木知得留は少し驚き、スマホを置いて、父親と、その後ろにいる上野和明を見た。

「お父さん、どうして帰ってきたの？」知得留は尋ねた。

そう言いながら、上野和明にも微笑みかけ、挨拶とした。

上野和明は軽く頷いた。

鈴木山は笑いながら答えた。「お前が家にいると聞いて、昼くらいは一緒に過ごせないかと思ってね」

知得留は急いで父の腕を親しげに掴んだ。「でも、お昼寝はどうするの？」

普段、父は必ず昼寝をする。

「家で寝ればいいさ」鈴木山は娘を甘やかすように言った。

「うん」

知得留は父の腕を引いてソファーへと向かった。

「空はどうして急に出発したんだ？」鈴木山は尋ねた。

「アメリカの支社のCEOが突然いなくなって、空が状況を確認しに行ったの。ついでにあるプロジェクトを確実にしてから帰ってくるって」

「そうか、男は仕事が第一だからな」鈴木山は頷き、納得した様子だった。

知得留もそれ以上は言わず、他の話題に変えた。「この頃、商業管理部は特に問題ないの？」

「まあね。お前が以前担当していた海上プロジェクトは今、各企業で予定通り進んでいる。建設部の人たちが監督している。ただ...」鈴木山は言った。「私の方で、対外ビジネス拡大の計画があって、今ちょっと厄介なんだ」

「どうしたの？」知得留は尋ねた。

「S国が、自国のシステムバグを修復したいんだ。今のところS国のIT技術者全員でも完璧な修復ができず、極めて危険な脆弱性が依然として存在していて、いつでもS国の機密内部ネットワークが攻撃される可能性がある。そのため、世界各国に支援を要請している。このバグ修復の報酬として、成功した国との間で輸出貿易協定を結び、現在の輸出税率を3パーセント引き下げた形で長期協力を結ぶという提案だ」鈴木山は説明した。「青木さんがとても重視している」

「その仕事をお父さんに任せたの？」知得留は尋ねた。

「対外関係は元々私の担当だからね」鈴木山は率直に答えた。

知得留は頷いた。「S国は優秀な人材が多い国よね」