第254章 郷よ、家族の温もりをありがとう(3)

部屋の中。

北村忠は呆然と道明寺華を見つめていた。

道明寺華もその瞬間、少し呆然としていた。

彼女は北村忠を殴るつもりはなかった。さっきは本能的な反応だっただけだ。

彼女は北村忠の鼻血が流れ続けるのを見つめていた。彼は何をして殴られたのか、まだ理解できていないようだった。

道明寺華は振り返ってティッシュを取り、「拭いて」と言った。

北村忠はようやく我に返り、ティッシュを取って鼻を押さえた。そして突然気づいたかのように叫んだ。「道明寺華、手が痒いのか?」

道明寺華は黙っていた。

「言え、なぜ俺を殴った?俺が何をした?」北村忠は道明寺華を睨みつけた。

道明寺華は何も言えなかった。

確かに先ほど北村忠が危険な動きをしたから殴ったのだが、それは彼女が彼の携帯を取ろうとしたから自己防衛したのであって、彼女は携帯を取ろうとした理由を説明できなかった。