第268章 彼の後悔は、傷を償えないこと(3更)

斎藤邸の渡辺菖蒲の部屋から、悲鳴が聞こえてきた。

村上紀文は急いで駆けつけた。

斎藤咲子はゆっくりと、そちらへ歩いていった。

部屋の中で、渡辺菖蒲は恐怖に満ちた表情で、携帯電話を床に投げつけていた。何か恐ろしいものを見たかのように、完全に取り乱していた。

村上紀文は部屋に入り、床から携帯電話を拾い上げた。

画面には不気味で恐ろしい女性が映っており、顔中が血まみれで、まるで画面から這い出してきそうな様子で、とても不気味だった。動画には恐ろしい音楽も流れており、こんな夜中では誰でも恐怖で死にそうになるほどだった。

村上紀文は急いで動画を停止した。

彼は母親の方を振り向いた。

渡辺菖蒲はまだ恐怖から抜け出せないようで、顔は真っ青で、瞳孔は開いたままだった。

斎藤咲子は冷ややかに渡辺菖蒲の様子を見ていた。

幽霊ではなく、心に抱える罪の仕業だろう。

渡辺菖蒲がこんな状態になるのを見られて、少し気分がよかった。

彼女は背を向けて立ち去った。

できれば恐怖で死んでくれれば一番いい!死ななくても、気が狂えばそれでもいい。

部屋の中で。

村上紀文は母親の方へ歩み寄り、「ただの動画です」と言った。

渡辺菖蒲は呆然と息子を見つめ、しばらく反応できなかった。

「大丈夫です」村上紀文は声を柔らかくして、その時、母親を慰めようと手を伸ばした。

しかし近づいた途端。

渡辺菖蒲は突然村上紀文の手を払いのけた。「偽善者ぶらないで!私と敵対する立場を取るんじゃなかったの?近づかないで!出て行きなさい!」

村上紀文は手を下ろした。母親の完全に取り乱した様子を見て、「落ち着いてください」と言った。

「落ち着く?」渡辺菖蒲は冷笑した。「斎藤咲子に散々虐められているのに、落ち着けというの!この数日間、私がどんな思いをしてきたか分かる?せっかく多くの取締役会メンバーを味方につけたのに、自分の尊厳を捨てて体を売ってまで支持を得たのに、あなたの一連の行動のせいで、私は面目を失い、すべてを失ったのよ!今や取締役会の大半が斎藤咲子側についているのよ、分かる?!」

渡辺菖蒲の後半の言葉はほとんど叫び声だった。

彼は知っていた。

もちろん知っていた。そしてそれこそが彼の望んでいた結果だった。