ジャズ喫茶。
個室で、村上紀文が座っていた。
目の前には大きな窓があり、外には東京の堀川が見えた。
午後の日差しは依然として眩しく、きらきらと川面に散りばめられた光が、透き通るように輝いていた。
本来なら晴れやかな日、本来なら祝福される良い日のはずだった。
しかし彼のせいで、こうなってしまった。
彼は振り向き、ドアが開くのを見た。
冬木郷が入ってきた。
つまり。
冬木郷は本当に斎藤咲子のことが好きだったのだ。
それを知れば十分だった。
彼は立ち上がり、冬木郷に向かって歩み寄った。
近づいた瞬間。
「ガン」と音を立てて、冬木郷の拳が村上紀文の顔面に激しく打ち込まれた。
村上紀文は痛みに顔をしかめ、思わず一歩後ずさりした。
冬木郷は自分の拳を揉みながら、激しい口調で言った。「村上紀文、俺がテコンドーと空手道をやってきて、しかも長年の経験があるって言っただろう!」