夜が明けたばかりだった。
鈴木知得留は道明寺華の運転する車で空港へ向かった。
道明寺華と上野和明の二人を一緒に連れて行くことはできなかった。そうすれば目立ちすぎて、青木太一に疑われてしまう。そのため、上野和明には昨日の午後に先に飛行機で鳳里道村へ行き、そこで彼女たちを待つように指示していた。
空港の待合室には、すでに数人が来ていた。
田村厚と楠木観月は比較的早く到着していた。楠木観月は鈴木知得留とその後ろにいる道明寺華を見て、また皮肉な笑みを浮かべた。「鈴木部長はどこへ行くにもメイドを連れていくのね。お嬢様の態度は、いつまで経っても直らないわ」
「これは私の個人的な習慣です。楠木部長は他人のプライベートに干渉すべきではないと思います」
「ただの世間話よ」楠木観月は肩をすくめた。「どうせお嬢様の好きにすればいいじゃない。今や鈴木部長は商業管理部の花形で、海上プロジェクトを成功させて一躍注目の的になったわ。野村社長があなたを褒めるのはもちろん、商業管理部のトップである青木さんまであなたを高く評価しているわ。こんなに注目されているのだから、私があなたの生活に口を出す立場じゃないわ!」その声は、依然として皮肉に満ちていた。
鈴木知得留は楠木観月と言い争うつもりはなかった。
その瞬間、彼女は考えていた。みんなは彼女が青木太一の心を掴んでいると思っているのだろうか。そうであれば、彼女が事故死しても、誰も青木太一を疑うことはないだろう!
彼女は道明寺華の手を引き、端の方に座って待っていた。
楠木観月は鈴木知得留が反論しないのを見て、さらに気勢を上げたようだった。彼女は言った。「本当に商業管理部の花形だからって、何でも好き勝手にできると思っているのね」
「楠木部長、あなたは私に敵意を持っているのですか?」鈴木知得留も黙っているタイプではなかった。
先ほど言い争いを避けたのは、これからの出来事について考えていて、どうでもいい人のことで時間を無駄にしたくなかっただけだった。
しかし今は、我慢する必要はないと感じた。
それに、より自然に振る舞えば振る舞うほど、相手の警戒心を解くことができる。
楠木観月は鈴木知得留のその一言を聞いて、表情が一変した。