第265章 鳳里道川の旅(3)神様は彼女を死なせたくない!

空港の待合室。

田村厚が戻ってきて、皆に向かって言った。「大丈夫です。ただの口論で、楠木部長も本気じゃないんです。すぐに落ち着きますから、皆さん心配しないでください。」

「やっぱり晴人さんは一番気さくですね。私たちは楠木部長が怖くて、晴人さんだけが彼女の機嫌を取りに行けるんです。」同僚の一人が心から言った。

田村厚は笑って、まさに良い人を演じるかのように言った。「実は楠木部長は少し短気なだけで、人としてはとても良い人です。皆さんもご存知の通り、楠木部長は仕事に真面目で、厳しい要求があるからこそ厳格に見え、親しみにくく感じるんです。」

「はい、はい、私たちも分かっています。楠木部長は仕事第一なんです。」誰かが同意した。

田村厚はさらに何か言った。

大体は楠木観月の同僚たちの心の中でのイメージを和らげるためだった。

田村厚の良い性格と人望は、商業管理部で有名で、誰もが田村厚と仲が良かった。ただし...鈴木知得留だけは例外だった。

鈴木知得留は田村厚が人気者である様子を冷ややかに見つめ、振り返ると楠木観月がいつの間にか戻ってきていた。彼女は何も言わなかったが、もう感情を爆発させることはなかった。

この時、待合室には明るい笑い声が響いていた。数人の同僚が冗談を言い合い、雰囲気は良好だった。

まもなく、搭乗時間となった。

鈴木知得留たちは列に並んだ。

キャップを被った男が遠くから立ち上がり、脇に寄って電話を取り、報告した。「鈴木知得留と楠木観月が空港で口論になりましたが、田村厚が彼らの対立を解決したようです。」

「鈴木知得留はどんな様子だ?」

「特に異常はありません。」

「よし。」

「ですが。」男は少し躊躇いながら言った。「楠木観月と田村厚の関係は単純ではないかもしれません。」

「ほう?」

「とても親密そうに見えます。」男は言った。「詳細は現時点では確認できません。」

「分かった。」

電話を切った。

金田貫一は青木太一の元へ向かった。

青木太一は年齢のせいで、病気でなくても以前のようにはいかなかった。この時間は早く、起床後ずっと自分の安楽椅子に座り、薄い毛布を掛けていた。金田貫一が来るのを見て尋ねた。「どうだ?」