第266章 鳳里道川の旅(4)村への到着

東京。

深夜の静寂が訪れていた。

冬木空は鈴木知得留との通話を終え、携帯を置いた。

空中庭園のロッキングチェアに座り、タバコに火をつけた。

知得留がいる時は、彼女に煙が当たらないよう、ほとんど吸わないようにしていた。

実際、彼は幼い頃からタバコに依存していた。生まれた時から、すでに若くはなかったのだから。

しばらくの間、煙を吐き続けた。

その時、再び電話が鳴った。

冬木空は吸い殻を消し、電話に出た。

「冬木さん、準備が整いました」

「ああ」

冬木空は立ち上がった。

知得留が囮だとしても、彼女一人を鳳里道川のような遠く危険な場所に放っておくわけにはいかなかった。

……

翌日。

明らかに誰も良く眠れていなかった。

次の日の8時に全員が集合した時、皆疲れた様子を見せていた。

来る前からここの環境が良くないことは分かっていたが、実際に経験するまでこれほどとは知らなかった。

同僚の二人は、そのせいで風邪を引いてしまっていた。

田村厚だけは元気そうで、全員に向かって言った。「外は小雨が降っていて、寒いです。皆さん、暖かい服装でお願いします。先ほど宿の主人に雨具を買いに行ってもらいました。皆さん持っていきましょう」

「晴人さんは気が利きますね」同僚の一人が即座に言った。

「今回のプロジェクトは私が担当していますから、当然です」田村厚は答えた。

ちょうどその時、主人が戻ってきて、傘、レインコート、長靴を買ってきた。

一行はそれぞれ身につけて出発の準備をした。

田村厚は注意を促した。「今回の村への訪問は、状況次第で3日から5日ほど滞在することになります。最終日まで戻れませんので、荷物は全てまとめておいてください」

「もう済ませてあります」何人かの同僚が答えた。

「10分後に出発します。皆さん、他に必要なものがないか、もう一度確認してください」

「はい」

10分後。

一行は出発した。

外は確かに小雨が降っていた。

もともと村への道は歩きにくかったが、雨天ではさらに困難を極めた。

通常3時間余りの行程が、この状況では少なくとも5時間はかかりそうだった。

しかも小さな町から鳳里道村までの道のりには、ほとんど人家がなく、まるで鳳里道村が世界から隔絶されているかのようだった。