田村厚の部屋。
二人とも服を着替え終わっていた。
見た目は真面目そうで、立派な風貌だった。
田村厚は部屋の窓とドアを開け放ち、部屋の中に涼しい風が入り込み、室内の暖かい空気を吹き散らした。
彼は楠木観月の方へ向かって歩き出した。窓際に少し長く留まっていたようで、自分を抑制しているように見えたが、実際には何の反応も示さなかった。
女性に対して突然反応がなくなっていた。
「鈴木知得留は今日とても積極的だったわね?」楠木観月は彼らのドア前での会話を聞いていたので、尋ねた。
田村厚は頷いて、「不思議だよ。普段は俺のことなんて見向きもしないのに、今日は突然好意的になって、何を企んでいるのか分からないよ!」
そう言いながら、皮肉っぽく笑った。
楠木観月は彼の様子を見て、「きっと嫉妬ね」と言った。
「え?」田村厚は眉を上げた。
「木村章は今私の側近よ。私は意図的に彼女を鈴木知得留に近づけさせたの。彼女の口から、知得留はあなたが私に特別な態度を取っていることに気付いて、おそらく嫉妬しているのよ」楠木観月は確信に満ちていた。
田村厚は驚いた様子を見せ、「最初に俺を振ったのは彼女じゃないか。冬木空と一緒になるって断固として決めたのに。まさか俺に対してまだ気持ちがあるとは思えないよ。もしあるなら笑い話だよ。あの時俺があれだけ彼女のことを好きで一緒にいたかったのに、あんなに冷たくされて、今更やり直したいだって?ありえないだろ?」
「女ってそういうものよ。手に入れたら大切にせず、失ってから取り戻したくなる」楠木観月は冷笑し、その時眉を少し上げて、「田村厚、もし鈴木知得留が突然やり直したいと言ってきたら、あなたは彼女についていくの?」
「俺を何だと思ってるんだ!確かに昔は本当に彼女のことが好きで、一生を共にしたいとまで思ってた。でも彼女は情け容赦なく俺を捨てた。今更戻ってきても絶対に許さない!それに、今は君のことがこんなに好きなんだ。彼女なんかと一緒になるわけがない」田村厚は断固として言った。
楠木観月は微笑み、その時少し恥ずかしそうな表情を浮かべて、「男の人って口で言うことと行動が違うこともあるでしょう」
「俺が君にどれだけ真剣か分からないのか?心を取り出して見せないと...」
田村厚の言葉が途切れた。