鈴木知得留は道明寺華が運転する車に乗っていて、頭の中が爆発しそうだった。
頭の中には道明寺華が言った「彼女は北村忠にキスしたがっている」という言葉が響いていた。
彼女が考えすぎているわけではない。
道明寺華は本当に本当に……北村忠のことを少し好きになっていた。
彼女は道明寺華が呟くのを聞いた。「この頃、北村忠がよく私を訪ねてくるの。実は彼のことがうるさくて、時々近づかれるのも嫌なんだけど、でも何故か、彼が何かを頼むと全部聞いちゃうし、彼に何かを決められても怒らないの。彼が私たちは友達だって言うと、なんだか嬉しくなっちゃう。」
道明寺華は北村忠に対して、愛憎相半ばする気持ちの理由が分からないようだった。
鈴木知得留も理解できなかった。なぜ道明寺華が北村忠を好きになったのか。
彼女はずっと道明寺華を上野和明の嫁だと思っていたのに、今この瞬間、どうして北村忠のものになってしまったのか!
重要なのは。
北村忠は華のことを好きになる可能性があるのか?!
ほぼありえない。
好感を持っていたとしても、北村忠が道明寺華に対して春の気持ちを抱いていたとしても、絶対に冬木心を好きな程度にはならないだろう。この人生で、北村忠の心の中で冬木心という三文字は深く根付いていて、抜くことはできない。だから、冬木心以外の誰が北村忠を好きになっても、自分を苦しめるだけだ。
こんなに純粋な道明寺華が、もし本当に北村忠のことを好きになってしまったら、これからどうなるのか、鈴木知得留には想像もつかなかった!
道明寺華は自分のために戦うこともないだろう。
ずっとこのまま耐え続け、受け入れ続けるのか?!
鈴木知得留はそう考えながら、こんなにも清らかな道明寺華を見つめた。
彼女はこの恋が始まる前に、北村忠にはっきりと説明する必要があると感じた。
そして道明寺華は、この時になっても、いつから北村忠のことを好きになったのか分からないでいた。
彼女の心の中では、まだ純粋に北村忠を友達として見ていた。北村忠が言ったように、命を懸けられる友達として!
車は家に到着した。
鈴木知得留は帰宅した。
明日は鳳里道川に行かなければならず、気持ちは重かったが、今は道明寺華のことで、さらに明るい気持ちにはなれなかった。
彼女はスリッパに履き替えて階段を上がった。