第313章 政府三男君島御門

黒い乗用車が東京の街をゆっくりと走っていた。

青木晴人は金田貫一の話を聞きながら、狡猾な笑みを浮かべた。

彼は金田貫一が言う結婚相手が誰なのか知らなかったが、相手の身分を想像するだけで興奮を抑えられなかった。彼にとって、大切なのは感情などではなく、権力と名誉だけだった。

「じゃあ今、彼女の電話に出ますか?」青木晴人は尋ねた。

「出なさい。まだ婚約を公表する時期ではないから、この女を利用して我々の目的を達成しよう」金田貫一は陰険に言った。

青木晴人は頷いた。

彼は何をすべきか分かっていた。

彼は電話に出た。「もしもし」

「どうしてこんなに遅く電話に出るの?」楠木観月は相変わらず、いつものように高圧的な口調で言った。

青木晴人の表情が少し変わった。

楠木観月はまだ彼を無名の人間だと思っているのか?こんな態度で話しかけてくるなんて。

彼は我慢した。どうせこの女を利用するだけだと思えば、気持ちも落ち着いた。彼は言った。「ちょっと都合が悪かったんだ。どうしたの?」

「どうしたって?さっきの会議で鈴木知得留にあんな風に言われたの見なかったの?本当に腹が立つわ!」楠木観月は激しく言った。「鈴木知得留のどこにそんな度胸があるの?あなたの前でもあんなに好き勝手に」

「あんな分別のない奴、いずれ後悔することになるさ!」

「でも今すぐにでも我慢できないわ」楠木観月は激しく言った。

「さっきも見たでしょう、会議室で私にまで反抗してきたわ。今は彼女の弱みが見つからないから何もできないわ!これじゃあ今後どうやって皆を従わせればいいの」

「でも私さっき...」

「辛い思いをさせてごめん」青木晴人は優しい口調で言った。

「じゃあこれからどうするつもり?」青木晴人の口調を聞いて、楠木観月も少し柔らかくなった。

鈴木知得留が言う青木晴人は恩を知らない人だなんて。

鈴木知得留は彼らの仲を引き裂きたいだけ。

鈴木知得留の思惑なんて、死んでも叶えさせない。

それに、青木晴人は彼女が入院中にわざわざ見舞いに来てくれた。彼女は青木晴人に以前と変わった様子は全く感じなかった。彼女は青木晴人を信じていた。