第323章 彼女はこの幸せな時間を大切にする(3更)

別荘の中。

斎藤咲子は狂ったように体をよじらせた。

彼女は力を込めて、村上紀文を押し出した。

村上紀文はバランスを崩し、数歩後ずさりして床に倒れた。

斎藤咲子は激しく唇を拭いながら、「村上紀文、酔って暴れないで」と言った。

村上紀文は床に倒れたまま動かなかった。

斎藤咲子は村上紀文の傍から離れた。

離れる際、腹立たしげに村上紀文を蹴った。

床に倒れた村上紀文は少し笑ったように見えた。

斎藤咲子は村上紀文が本当に酔いつぶれているのだろうと思った。

彼女は親切心から助け起こすこともせず、むしろ酔い死んでくれればいいと思った。

……

北村忠も酔っていた。

泥酔状態だった。

彼は家に帰らなかった。

どうせ家の親父も自分のことを気に入っていないのだから、帰る意味がない!

どこに行けばいいのかもわからなかった!

そこで運転手に冬木空のマンションまで送らせた。

どうせ冬木空の前では尊厳なんてないし、子供の頃から恥ずかしい姿を見られ続けてきたのだから、気にしない。

彼は大胆に冬木空の家のドアを叩いた。

しばらくして冬木空がドアを開け、ふらふらしている北村忠を見た。

「酒か?」と冬木空は尋ねた。

「飲んだ」と北村忠は素直に答えた。

「飲んだなら家に帰らずにここに来て何をする?」

「お前に会いたくなったんだよ、ダメか?ここにいたいんだ!」北村忠は突然怒り出し、酔っ払いながら冬木空の家に入り込み、ソファーに重たく座り込んで倒れ込んだ。

倒れたまま動かなかった。

冬木空は北村忠を見つめながら、ゆっくりとドアを閉めて近づいた。

北村忠は見下ろす冬木空を見た。

北村忠は体を反転させ、お尻を冬木空に向けた。「追い出そうとしても無駄だ、死んでも動かないぞ!」

冬木空は北村忠を見つめた。

北村忠は気にする様子もなく、目を閉じた。

その時、ぶつぶつと呟いていた。「鈴木知得留が来てからは、お前の所で酒も飲めなくなった。冬木空、お前は俺に申し訳ないと思わないのか?長年俺がお前に付き合ってきて、いつだって俺がお前の側にいたのに、鈴木知得留が一人現れただけで俺のことを忘れて、この恩知らずが……」

最初は小声だったが、次第に声が大きくなっていった。

そしてついに爆発した。