第324章 中秋おめでとう(1更)

朝食を済ませた。

鈴木知得留は出勤に向かった。

道明寺華は駐車場で彼女を待っていた。

車は商業管理部へと向かった。

「昨夜、北村忠が私たちの家にいたの」と鈴木知得留は言った。

道明寺華は「ああ」と短く返した。

「彼、酔っていたわ」と鈴木知得留は道明寺華を見つめた。

道明寺華は相変わらず無表情だった。

鈴木知得留は諦めたように言った。「いつ出発するか決まった?」

「まだ決めていない」と道明寺華は答えた。

少し名残惜しかったから。

そして、自分があとどれだけ生きられるかも分からなかった。

鈴木知得留もそれ以上は聞かなかった。

車は商業管理部に到着した。

鈴木知得留は自分のオフィスへと向かった。

ドアを開けた瞬間。

彼女は立ち止まった。

鈴木知得留は左右を見回した。

君島御門が彼女のオフィスのソファに座り、口元に笑みを浮かべていた。

「君島さんがこんなに早くいらっしゃるなんて、何かご用件でも?」鈴木知得留は礼儀正しく微笑みながら尋ねた。

「突然の訪問で申し訳ありません」

「君島さん、お気遣いなく」鈴木知得留は振り向いてお茶を入れ始めた。

「今日あなたを訪ねたのは、プロジェクトの件についてです」君島御門はソファから立ち上がり、鈴木知得留が差し出したお茶を受け取った。

「どうぞ、お話しください」

「昨日、鳳里道村の村民がプロジェクトの進行を悪意を持って妨害しているとおっしゃいましたが、昨夜考えた末、もう一度現場の状況を確認すべきだと思いました。もちろん、地方官を派遣すれば事態は収まるでしょうが、力で抑え込むのは避けたい。もう一度、地域住民の考えを理解したいと思います」

「つまり、君島さんのご提案は?」

「鈴木さんに同行していただけないでしょうか」君島御門は率直に言った。

鈴木知得留は一瞬躊躇した後、ゆっくりと笑みを浮かべて言った。「君島さん、確かにプロジェクトは私が全権を任されていますが、鳳里道村への訪問は一日や二日で済むものではありません。今は勤務中ですし、簡単に休暇を取るわけにはいきません」

「その点はご心配なく。先ほど青木さんに確認を取り、了承を得ています」

鈴木知得留は唇を噛んだ。

君島御門は本当に狡猾で、彼女が断る理由まで予測していたようだった。