第330章 風雲変(4)最も危険な場所が最も安全な場所

「彼女はどこに行ったんだ?」鈴木山は単刀直入に尋ねた。

上野和明は指を強く握りしめた。

前回、鳳里道村で鈴木知得留に命を救われて以来、上野和明の心には大きな変化が起きていた。

彼はそれまで鈴木山の下で働いていた。

部隊に入ったのも実は鈴木山の采配で、将来彼の役に立てるように訓練するのが目的だった。部隊から戻ってきたのももちろん鈴木山の決定だった。この家にはほとんど戻ってこなかったが、この家に対して並々ならぬ忠誠を持っていた。

そして彼が最も忠誠を誓っていたのは当然鈴木山で、たとえ自分が鈴木知得留を好きだとしても、無条件で鈴木山の指示に従っていた。だから彼は鈴木山の知られざる事情、鈴木知得留さえも知らない事情をいくつか知っていた。

しかし鈴木知得留に命を救われてから、彼は変わった。