「外で君の病状を監視している者は少なくないぞ」と厳謹は言った。
冬木空は唇を引き締め、そう予想していた。
突然の病気で突然入院というのは、誰も簡単には信じないだろう。
「鈴木知得留から電話があった。早く戻るように言っておいた」と厳謹は言った。
冬木空の瞳が微かに動き、真っ直ぐに厳謹を見つめた。
厳謹は冬木空の視線に少し気味が悪くなり、「なぜそんな目で見るんだ?鈴木知得留は君の妻なんだから、こんな重病の時に呼び戻すのは当然だろう。わざと君の病状を監視している連中の前で言ったんだ。君が死にかけているという印象を与えるためにな」
冬木空は黙り込んだ。
今この時期に知得留が戻ってくるのは最高の展開だが、途中で危険な目に遭わないかが心配だった。
少しでも賢い者なら知得留を使って彼の病状の真偽を確かめようとするだろう。金田貫一のような老獪な男がそれを思いつかないはずがない。