寝室のドアが開けられた。
鈴木知得留はクローゼットの中で身動きひとつせずに隠れていた。
部屋の中で誰かの足音が聞こえ、鈴木知得留の心臓は早鐘を打っていた。
次第に、足音は止まった。
鈴木知得留は外の人が去ったのかどうかわからなかった。
軽々しく出ていく勇気もなかった。
そのまま少なくとも10分が経過した。
鈴木知得留はそっとクローゼットのドアを開けた。
出たとたん。
「戻ってくると思っていた」という声に、鈴木知得留は魂が抜けそうになるほど驚いた。
彼女は急いで振り向いて君島御門を見た。
君島御門は今、口元に笑みを浮かべ、相変わらず物腰の柔らかな様子だった。
鈴木知得留は彼を睨みつけた。
君島御門は言った。「今、横須賀市の警察が総出で君を探しているそうだ。君の賢さを考えれば、こんな時に無謀に逃げ出すはずがない。だから、ここに戻ってくるだろうと思っていた。案の定、君は私の予想以上に賢かったな」