第340章 斎藤咲子が手術同意書にサインする

病院。

医者は村上紀文を見つめ、彼の断固とした態度を見て、もう説得を諦めた。

「君がそこまで決意を固めているなら、もう何も言うまい」と医者は言った。

そう言って、立ち去った。

斎藤咲子はその時、なぜか、ドアの前まで来ていたのに入れなかった。

医者が出てきた時、彼女はむしろ横に避けた。

村上紀文は斎藤咲子に気付かなかった。

腹部の痛みが本当に酷かったから。

今回の痛みは、これまでのどの時よりも深刻だった。

他のことに気を配る余裕などなかった。

彼は布団をめくって起き上がった。

腹部を押さえながら、苦労してトイレまで行って身支度を整えた。

しばらくして。

やっとトイレから出てきた。

便器に長く座っていた。以前も胃の痛みはあったが、今回ほど酷くはなかった。

トイレを出た瞬間、彼の目が一瞬止まった。