病院。
医者は村上紀文を見つめ、彼の断固とした態度を見て、もう説得を諦めた。
「君がそこまで決意を固めているなら、もう何も言うまい」と医者は言った。
そう言って、立ち去った。
斎藤咲子はその時、なぜか、ドアの前まで来ていたのに入れなかった。
医者が出てきた時、彼女はむしろ横に避けた。
村上紀文は斎藤咲子に気付かなかった。
腹部の痛みが本当に酷かったから。
今回の痛みは、これまでのどの時よりも深刻だった。
他のことに気を配る余裕などなかった。
彼は布団をめくって起き上がった。
腹部を押さえながら、苦労してトイレまで行って身支度を整えた。
しばらくして。
やっとトイレから出てきた。
便器に長く座っていた。以前も胃の痛みはあったが、今回ほど酷くはなかった。
トイレを出た瞬間、彼の目が一瞬止まった。