第352章 矛盾激化(4)誘拐される

社長室。

塩川真は意図的に注意を促していた。

斎藤咲子もしばらく考え込んでいた。

この一年間、確かに疲れていた。今も疲労を感じていたし、塩川真にもそう言われて、自分が極端すぎたのではないかと疑問に思い始めた。部下に任せて、負担を分散させるべきなのかもしれない。

彼女は口元に薄い笑みを浮かべた。「あなたの言う通りね。私一人で一生やっていくわけにはいかないわ。こんな大きなグループを、私の意志だけで長期的に運営していくのは無理だわ」

塩川真は頷いた。

「でも今は、斎藤グループの人々を完全に信頼することはできないの。渡辺菖蒲は今のところ大きな波風は立てていないけど、彼女が裏で取締役たちと結託して、私を斎藤グループから追い出そうとしているのは否定できないわ。この時期に仕事を手放したら、渡辺菖蒲が何か策を講じる可能性が高いわ」

塩川真はため息をついた。

結局、斎藤会長は渡辺菖蒲と村上紀文を警戒しているのだ。

彼はこれ以上何も言わなかった。

斎藤咲子は感謝の言葉を述べた。「塩川おじさん、私のことを考えてくれているのは分かっています。でも、もう少し疲れてもいい。せっかく手に入れたものを、また簡単に手放したくないの」

「はい、分かりました」塩川真は恭しく答えた。

「どんなことがあっても、本当にありがとう。最初から私の側にいて、取締役たちからどんな嫌がらせを受けても私の味方でいてくれた。あなたがいなければ、ここまで続けられなかったかもしれない」斎藤咲子は心から言った。

「会長、それは私の当然の務めです」

斎藤咲子は微笑んだ。

彼女は善悪をはっきりと区別し、自分に親切にしてくれた人のことは心に刻んでいた。

斎藤咲子は再び仕事に没頭した。

塩川真は静かに彼女のオフィスを出た。

オフィスの外で、長女の塩川優が秘書デスクに座っており、この時は特に急ぎの仕事もなく、スマートフォンを見ていた。

塩川真は顔を曇らせた。「塩川優」

塩川優は驚いて、急いでスマートフォンを置いた。

「仕事中に遊んでいるのか?」

「お父さん、ちょっと見ただけなのに見つかっちゃった。そんなにしつこく監視しないでよ。安心して、私すごく頑張ってるから」

塩川真は娘の言葉を信じていないようで、叱るような口調で言った。「今後は気をつけろ。次に見つけたら給料を減らすぞ」