第353章 矛盾激化（5）行方を探す

村上紀文は携帯を持ち、手のひらに汗をかいていた。

「事件の経緯はどうなっているのですか？」彼は感情を抑え、できるだけ冷静を保ち、できるだけ平静な声で話そうとした。

警察官は言った。「事故現場は赤坂通りで、斎藤グループから斎藤邸への中間地点です。我々の初期判断では、この事故の目的は主に斎藤咲子を誘拐することでした。現場の状況を見ると、根岸峰尾が殴打されて気絶していて、斎藤咲子が行方不明になっており、バッグと携帯電話が車に残されていたことから、誘拐の状況と一致します。また、斎藤咲子についての我々の調査から、彼女はあなたとあなたの母親との関係が非常に悪く、それを人前でも隠そうとしていなかったことがわかっています。そのため、警察署に来ていただき、より詳しい状況を把握させていただきたいと思います。」

つまり、警察は実際に彼が斎藤咲子を誘拐したのではないかと疑っているのだ。

しかし、証拠がないため強制的に警察署に連行することはできず、電話での呼び出しという形を取るしかなかった。

村上紀文の表情はその瞬間、冷たく暗くなり、拳を強く握りしめた。

誰だ！

彼には分かりすぎるほど分かっていた！

彼は警察官に率直に言った。「この事故は私とは何の関係もありません。そして斎藤咲子の家族として、この交通事故がどのように起きたのか、斎藤咲子がどのように誘拐されたのか知る必要があります。」

警察官も遠回しにせず、おそらくより有用な情報を得ようとして、「斎藤咲子の車のドライブレコーダーを確認しました。犯人は計画的でした。事故の際、一台の乗用車がハイビームを直接当て、運転手の視界が遮られ、急ハンドルを切って急ブレーキをかけ、ガードレールに衝突しました。その後、運転手の根岸峰尾が状況を確認するために降車したところ、棒で殴られて気絶し、頭蓋骨を負傷したため意識不明の状態が続いています。加害車両のナンバープレートは意図的に細工され判読不能で、車内の人物も野球帽とマスクを着用していたため容貌を確認できません。現在、交通監視カメラで車両の追跡を行っていますが、車両は対抗監視能力があるようで、監視カメラを巧みに避け、現時点では痕跡が見つかっていません...」

村上紀文は突然電話を切った。

警察とやり取りしている時間はなかった。