病院。
北村忠は手術室の外で少しイライラしながら待っていた。
廊下に座り、頭を抱えながら、心が死にそうなほど苦しかった。
彼の脳裏には道明寺華の姿しかなかった。全て彼女の...耐え忍ぶ姿だった。
廊下に突然、急ぎ足の音が響いた。
北村忠が振り向くと、慌てて駆けつけてきた広橋香織の姿が見えた。冷静を装っているものの、不安を隠しきれない様子だった。
広橋香織は北村忠の前で足を止めた。
「母さん」北村忠が口を開いた。
「パン!」広橋香織は北村忠の頬を激しく叩いた。
北村忠は母親を見つめ、その瞬間まるで叩かれて呆然としたかのように、反応できなかった。
「華は?」広橋香織は北村忠の気持ちなど気にもせず、切迫した様子で尋ねた。
北村忠は唇を噛みしめ、感情を抑えようとしているようだった。「手術室です」