北村雅は車を運転して別荘に戻った。
広橋香織は助手席に座り、ずっと窓の外を見ていた。
北村雅は何度か話しかけようとしたが、広橋香織の様子を見て結局何も言えなかった。
車内は静まり返っていた。
広橋香織は眠るつもりはなかった。
しかし一晩中起きていたことと、北村雅がゆっくり運転していたこともあり、広橋香織はあまりにも眠くて、目を閉じるとすぐに眠りについた。
北村雅が車を別荘の玄関前に停めた時、横を向くと広橋香織が眠っているのが見えた。
彼女は小柄というか、むしろ愛らしい体つきだった。
彼女は助手席に体を丸めて、頭を横に傾け、顔を静かにシートの背もたれに寄せていた。唇は軽く閉じられ、深い眠りについているようだった。
北村雅はずっと彼女を見つめていた。
彼女の唇を見つめながら、口紅のせいだろうか?