北村忠は全身が爆発しそうだった。
しかし、その瞬間も我慢して、カフェの椅子に腰を下ろした。
木村文俊の反応を見ていた。どう反応するのか見極めようとしていた。
そして、その反応を見て、思わず飛び出しそうになった。
木村文俊がその中年の貴婦人の手を自然に取り、二人の手が固く握り合っているのを目にした。
中年の貴婦人は少女のような恥じらいを見せ、作り過ぎた表情で明らかに誘惑していた。
二人は手を繋いだまま、長々と話をしていた。
北村忠は内臓が爆発しそうなほど我慢していた。
彼は携帯を取り出し、何枚も写真を撮った。
木村文俊を暴露してやりたかった。この浮気男を。
怒り心頭に発して席を立った。
その瞬間、怒りのあまりか、不注意でコーヒーテーブルに強く足をぶつけてしまった。
その行動で、カフェにいた他の客の注目を集めてしまい、木村文俊も振り返った。
木村文俊が振り返ると、北村忠の険しい表情と目が合った。
彼は一瞬凍りついたように動けなくなり、すぐに貴婦人の手を離し、立ち去る北村忠の姿を見て、一瞬考えた後、急いで追いかけた。
中年の貴婦人は不機嫌な表情を浮かべた。
木村文俊は北村忠を追いかけた。
「北村!」木村文俊は後ろから呼びかけた。
北村忠は大股で歩き続け、無視した。
「北村!」木村文俊は走って追いつき、北村忠の腕を掴んだ。「君が思っているようなことじゃない。」
「じゃあ、どういうことなんだ?」北村忠は冷笑した。
木村文俊は焦った様子で説明を始めた。「これは単なる接待だよ。今回の新作発表会のスポンサーが、さっきの女性なんだ。彼女に対応するためだけで、冬木心を裏切るようなことは何もしていない!」
「どこまでが裏切りじゃないんだ?同じベッドに入るまでは大丈夫ってことか?」北村忠は皮肉った。
「俺は本当に心のことが大好きなんだ。何年もかけてやっと一緒になれたのに、どうして彼女を裏切るようなことをするはずがある?」木村文俊は必死に説明し続けた。