第409章 北村爺さん、あなたの正妻の広橋さんが妊娠したよ!

鈴木知得留は医者に再び感謝の言葉を述べた。

二人は病院を出た。

朝は冬木空が自分で運転してきた。

上野和明に病院まで送ってもらうことは絶対に拒否した。

今も冬木空が運転して帰る。

この鉄のように頑固で保守的な男は、自分の体に問題がないと分かってから、来た時とは全く違う様子になった。

帽子も取り、サングラスも外し、マスクも消えていた。

鈴木知得留はいつも冬木空を超然とした存在だと思っていて、普通の人のような感情を見せることは極めて稀だった。

しかし今、彼は車を運転しながら鼻歌を歌っていた。音程は少々外れていたが、彼の気分が最高潮に達していることは明らかだった!

男にとって、体に問題がないというだけでこんなに...爽快になれるものなのか?!

鈴木知得留も実は冬木空の気持ちを損ねたくなかった。

冬木空がこんなにも隠すことなく喜んでいるのは珍しく、その喜びも徹底的なものだった。

鈴木知得留は言った、「今、言うべきか言わないべきか分からないことがあるんだけど。」

冬木空は頭を回して鈴木知得留を見た。

上がった口角、輝く瞳は小さな星を宿せるほど明るかった。

彼は言った、「妻が私に対して、言うべきか言わないべきかなんて、何でも言っていいんだよ。」

「さっき医者が言っていた46歳の高齢妊婦は、広橋香織さんよ。」

「……」ある人の上がっていた口角が、固まった。

「さっき私たちが検査に行っている時、私が先に戻ってきたら、広橋さんに会ったの。広橋さんは妊娠していて、私は彼女の検査結果を見たわ。妊娠10週で、産むか産まないか考えているところだって。彼女は完全にパニックになっていて、どうして彼女の年齢でも妊娠できるのか、しかも一回で成功したって理解できないって言ってたわ!」

「……」ある人の口角が痙攣し始めた。

案の定。

吐血し始めた。

鈴木知得留は少し困ったように言った、「周りの人たちは一体何を食べて育ったのかしら?みんな妊娠なんて遊びみたいに簡単にできちゃうなんて。」

冬木空の表情が随分暗くなった。

明らかにショックを受けていた。

彼はハンドルを強く握りしめ、歯を食いしばって言った、「鈴木知得留。」

うん。

初めて「妻」と呼ばずに本名で呼んだ。

「私たちの愛の結晶。」

なんて「愛の結晶」って、そんな古くさい言い方はやめてよ。