夜の部屋の中で、北村忠はじっと道明寺華を見つめていた。
灯りのせいだろうか?
突然、少し幻惑されたような気がした。
道明寺華が綺麗になったように見えた。
彼女の肌が滑らかで繊細に、さらに白くなったように感じた。
見慣れてきたからだろうか?
見慣れてきて、道明寺華も想像していたほど醜くないと思えてきた。
「母さんに言われてそうしているのか?」と彼は尋ねた。
胸の中に何故か寂しさが広がった。
実は予想できたはずだった。道明寺華の知識の世界では、感情はほぼ完全な盲点と言えるほどで、彼も期待することはないはずだった。
そもそも彼は何を期待していたのだろう?!
「あなたともっと仲良くなりたいの」と道明寺華は正直に答えた。
北村忠は一瞬固まった。
心臓が。
跳ねている。
少しずつ、激しくなっていくようだった。
彼は、道明寺華がためらいもなく「はい」と答えると思っていた。
他の答えが返ってくるとは全く期待していなかった。
そしてこの答えは、彼の心を温かくした。
この頃の道明寺華は本当に彼に異常なほどの温かさを感じさせた。まるで胸の中に温泉が横たわっているかのように、絶え間なく流れ続けていた。
道明寺華は北村忠の突然の沈黙と、少し熱っぽい眼差しの意味が分からず、「お風呂に入らないの?」と尋ねた。
北村忠は我に返った。
彼は自分に言い聞かせた、考えすぎかもしれないと。
彼は浴室に入り、浴槽に横たわった。
天井を見上げても何か変な感じがした。
道明寺華に対して、一体何を期待しているのだろう?
本当にそう考えると、答えが出てこなかった。
彼の根深い考えの中では、道明寺華のような性格や容姿の女の子を本当に好きになることなど絶対にありえないはずなのに、好きでもないのに何を期待しているのだろう?
彼はゆっくりと息を吐いた。
もういい。
今考えても分からないことだし、成り行きに任せよう。
彼は浴槽から上がり、服を着てベッドに戻った。
道明寺華は北村忠が出てくるのを見て、彼の髪がまだ少し濡れているのに気付いた。
彼女は浴室からドライヤーを持ってきて、北村忠をベッドの端に座らせ、彼の隣に立って髪を乾かしてあげた。
北村忠は笑って、「これも母さんに教わったの?」と聞いた。
「違うわ、これは独学よ」と道明寺華は答えた。