北村忠は自分のオフィスに戻った。
彼は黙々と自分の感情を整理していた。
井上明が裏で何か策を弄してくるのは予想していたことだった。
だから今日の結果も想定内で、どうせ今日の目的はそこにはなかった。
彼は冷静さを保っていた。
自分が作成した予算案を修正し、以前は社内向けだったものを、今は社外向けに変更する必要があり、多くの用語の使い方が大きく不適切になってしまう。
彼は真剣に書き続けた。
午後3時。
加賀玲奈がドアをノックして入ってきた。全身が緊張している様子だった。
北村忠は顔を上げて、「何かあったのか?」
「社長、ニュースをご覧ください」加賀玲奈は少し震える声で言った。
北村忠は眉をひそめた。
その瞬間、何か良くないことが起きたと薄々感じていた。
北村忠は携帯を手に取り、北村系アプリを開いた。北村系が業界のリーダーになれたのも、実際には北村系のニュース報道の自由さにあった。自社の内部のことを報道するのはもちろん、権力者のことも正確に報道する。だから北村忠は自社のプラットフォームが自社の内部ニュースを暴露した瞬間も冷静だった。しかも考えるまでもなく、これは井上明と無関係ではないことは分かっていた。
大きな見出しには「北村忠の独断専行、多くのスポンサーが契約賠償を要求」と書かれていた。
北村忠は内容を開いて、下に目を通した。
「北村系内部筋によると、北村忠が北村系の社長に就任して以来、会社で独断専行を行い、取締役会のいかなる決定にも従わず、我が道を行く。取締役会の同意を得ずに『天の堂』の改善を強制し、同時に結果を顧みず2週間の放送停止を行い、『天の堂』制作の輝星映画に巨大な損失をもたらした。同時に『天の堂』オーディション番組の多くのスポンサーが一斉に契約解除と巨額の違約金の賠償を要求している。各スポンサーは次々と弁護士声明を発表し、すでに裁判所に提出されており、現在北村系の内部状況は深刻である。」
ニュースの次のページには北村忠のかなりハンサムな写真が一枚あった。
写真の下には彼についての紹介があった。