北村忠は自分のオフィスに戻った。
彼は黙々と自分の感情を整理していた。
井上明が裏で何か策を弄してくるのは予想していたことだった。
だから今日の結果も想定内で、どうせ今日の目的はそこにはなかった。
彼は冷静さを保っていた。
自分が作成した予算案を修正し、以前は社内向けだったものを、今は社外向けに変更する必要があり、多くの用語の使い方が大きく不適切になってしまう。
彼は真剣に書き続けた。
午後3時。
加賀玲奈がドアをノックして入ってきた。全身が緊張している様子だった。
北村忠は顔を上げて、「何かあったのか?」
「社長、ニュースをご覧ください」加賀玲奈は少し震える声で言った。
北村忠は眉をひそめた。
その瞬間、何か良くないことが起きたと薄々感じていた。
北村忠は携帯を手に取り、北村系アプリを開いた。北村系が業界のリーダーになれたのも、実際には北村系のニュース報道の自由さにあった。自社の内部のことを報道するのはもちろん、権力者のことも正確に報道する。だから北村忠は自社のプラットフォームが自社の内部ニュースを暴露した瞬間も冷静だった。しかも考えるまでもなく、これは井上明と無関係ではないことは分かっていた。