「こんにちは、北村忠です」と北村忠は率直に言った。
斎藤咲子は口元に笑みを浮かべ、「知っています。何かご用でしょうか?」
「重要な件です。お会いしたいのですが、時間はありますか?」
斎藤咲子はオフィスに座り、今日のスケジュール表を確認してから言った。「今日はスケジュールがびっしりです。急ぎでなければ、明日の午前中なら時間があります」
「急ぎです」と北村忠は言った。「よろしければ、今日お待ちしていられます。何時でも構いません」
「夜7時まで、ずっと忙しいです」
「7時にはオフィスに伺います」
「はい」
「では、お邪魔しました」
「はい」
電話を切ると、斎藤咲子は向かいの鈴木隼人を見た。
鈴木隼人は言った。「北村系の北村忠ですか?」
「はい」
「最近、北村系の内部が不安定なようですね。北村忠があなたを訪ねるのは、協力を求めるためでしょう」