部屋の中。
静かで、とても静かだった。
世界全体が静まり返っているようだった。
もし虎が抗議し始めなければ……
彼は道明寺華をじっと見つめ、彼女の頬が薄く赤らんでいるのを見た。
この女も恥ずかしがることがあるのか?
彼ののどが動いた。
虎の泣き声はさらに激しくなった。
北村忠は虎を抱き上げ、部屋の中を行ったり来たりしながら、あやしていた。
そして呟いていた。「ママを取られるのが怖いの?この小さなライバル……」
ライバル?!
道明寺華は北村忠を見つめた。
ライバルって、二人が同じ人を好きな時に使う言葉じゃないの?!
北村忠は、二人とも彼女のことが好きだと言っているの?
なぜかわからないけど。
心臓の鼓動が速くなった。
まるで5キロ走ったかのように、制御できないほど激しくなった。