第435章 成敗はこの一戦にかかる（その1）

北村忠は優しく自嘲的に笑った。

彼は冬木心の箸と茶碗を受け取った。

今となっては何を期待することがあるだろうか。

実際、冬木心と落ち着いて友達になることが、彼らにとって最良の選択だった。

彼は数口で朝食を平らげた。

冬木心は彼が急いで食べている様子を見て、笑いながら言った。「そんなに急いでいるの？」

「この後会議があって、今夜は生放送があるんだ。うまくいくとは思えないけどね」北村忠は率直に言い、心の中の感情も一掃された。

彼にとって、今夜は生死を分ける戦いだった。

もし今夜の視聴率が期待値に達しなければ、後の数回の放送で挽回するのは難しくなるだろう。

冬木心も北村忠の現状をよく理解していた。彼女は多くを語らず、「気をつけて運転してね。これは私の車のキー。先に使って。私は後でスタジオの車で行けるから」と言った。

「うん」北村忠も遠慮しなかった。

彼は朝食を済ませた後、冬木心の車のキーを受け取り、すぐに車で出発した。

運転しながら、頭の中は仕事のことでいっぱいだった。絶え間なく考え続け、思いつく限りのあらゆる状況を検討していた。しかし、びっしりと詰まった仕事のスケジュールの中で、ふと道明寺華のことが頭をよぎった。

昨夜一晩中帰らなかったことで、道明寺華が一晩中待っていたのではないかと急に心配になった。

すぐに電話を取り出してかけたが、道明寺華が以前彼に一度電話をかけていたことには気付かなかった。

電話は何度か鳴った。

道明寺華はようやく電話に出て、まだ眠そうな声で「もしもし」と言った。

「まだ寝てたの？」北村忠は尋ねた。

「うん」向こうが答えた。

「昨夜は仕事で徹夜してたんだ。君が待ってないか心配で」北村忠は言った。

声には申し訳なさが滲んでいた。華に一言言うのを忘れていたことを本当に後悔していた。こんな時間になってもまだ寝ているのを見ると、本当に一晩中待っていたのではないかと心配になった。

「知ってる」道明寺華はさらりと答えた。

「知ってるって？」北村忠は眉を上げた。

「帰って来なかったってことは、仕事してたってことでしょう？」道明寺華は軽く言い流し、ある出来事については一切触れなかった。

「昨夜、僕を待ってなかった？」北村忠は尋ねた。その瞬間、胸が少し締め付けられる感じがした。