北村系部長室。
井上明は携帯を持ち、顔には軽蔑と皮肉な表情を浮かべていた。
電話をかけてきたのは木村文俊だった。
木村文俊は電話の向こうで熱く語った。「井上部長、北村忠の成功を阻止するのは実に簡単です。今、あなたは北村系を管理していて、皆があなたの言うことを聞くはずです。ちょっとした細工をするだけで、北村忠は二度と這い上がれなくなり、さらに恥をかくことになるでしょう!」
「そうかな?」井上明は全く興味を示さなかった。
北村忠に興味がないわけではなく、木村文俊という人物に全く興味がなかったのだ。
母親は木村文俊が陰険で狡猾だと言っていたが、所詮は小手先の策略に過ぎない。
今日流れたニュースは、せいぜい北村忠の評判を少し傷つけただけで、北村忠に何の影響も与えることはできない。北村忠はそんなことを気にも留めないだろう。最大の利点と言えば、木村文俊自身の評価を上げただけで、望んでいた効果は全く得られていなかった。
母親だけが、このイケメンを信用して、彼に協力させようとしているのだ。
木村文俊は続けた。「井上部長はお考えになったことがありますか?『天の堂』は生放送です。生放送で最も心配なことは何でしょうか?番組の質でもなく、事前の宣伝でもありません。スムーズに放送できないことです。」
その瞬間、井上明は眉をしかめた。
木村文俊は興奮して話し続けた。「井上部長が『天の堂』の今夜の生放送で突然トラブルが発生し、一時中断するように、あるいは会場のステージ、例えば音響や照明などで少しでも問題が起これば、観客の視聴に直接影響を与えることができます。そうなれば、北村忠の能力は疑問視されることになり、彼が多大な労力をかけて作り上げた評判は自分で打ち砕くことになるのではないでしょうか!」
井上明は木村文俊の言葉を聞きながら、口角に不敵な笑みを浮かべた。「木村文俊、お前は私が思っていた以上に悪質な考えを持っているな!」
「お褒めに預かり光栄です。私はただ自分の事業を守りたいだけです。もし北村忠が成長すれば、私にはもう良い日々は望めません。それに、今は私があなたの母上と一緒にいるので、当然、彼女の心配事を取り除きたいと思っています。」