北村系部長室。
井上明は携帯を持ち、顔には軽蔑と皮肉な表情を浮かべていた。
電話をかけてきたのは木村文俊だった。
木村文俊は電話の向こうで熱く語った。「井上部長、北村忠の成功を阻止するのは実に簡単です。今、あなたは北村系を管理していて、皆があなたの言うことを聞くはずです。ちょっとした細工をするだけで、北村忠は二度と這い上がれなくなり、さらに恥をかくことになるでしょう!」
「そうかな?」井上明は全く興味を示さなかった。
北村忠に興味がないわけではなく、木村文俊という人物に全く興味がなかったのだ。
母親は木村文俊が陰険で狡猾だと言っていたが、所詮は小手先の策略に過ぎない。
今日流れたニュースは、せいぜい北村忠の評判を少し傷つけただけで、北村忠に何の影響も与えることはできない。北村忠はそんなことを気にも留めないだろう。最大の利点と言えば、木村文俊自身の評価を上げただけで、望んでいた効果は全く得られていなかった。