車は東京の通りを走っていた。
北村忠は冬木心の表情を見て、急いで尋ねた。「どうしたの?!」
冬木心は木村文俊の電話を突然切った。
北村忠はブレーキを踏んで、車を路肩に停めた。
彼は真剣な表情で「木村文俊は何を言ったんだ」と言った。
冬木心は動揺して、唇を噛みしめたまま一言も発しなかった。
「冬木心!」北村忠の声が大きくなった。
冬木心の唇は噛みすぎて真っ白になっていた。
北村忠は「冬木心、一体何があったんだ?!」と言った。
冬木心は目が真っ赤になり、唇を離して、声を詰まらせながら「木村文俊が、私と彼のベッドシーンの動画があるって...それを公開すると言ってるの...」
「くそっ!」北村忠は拳でハンドルを強く殴った。
冬木心は「本当に木村文俊を殺してやりたい」と言った。
「何か条件を出してきたのか?」北村忠は尋ねた。
冬木心は首を振って「聞かなかった、すぐに電話を切ったの」と答えた。
北村忠は自分の携帯を取り出し、考えることなく直接電話をかけた。
冬木心は何か言いかけたが、止めた。
電話が繋がると、北村忠は単刀直入に「何が望みだ?」と言った。
木村文俊は冷笑して「今、お前たちに追い詰められて、こんなに惨めな目に遭わされて、大勢の前で恥をさらされて、俺にどうしろっていうんだ?!冬木心と心中するしかないだろう!」
「お前にそんな度胸があるとでも?」
「俺は冬木心とのベッドシーンの動画を持ってるんだぞ!北村忠、お前は冬木心を何年も好きだったんだろう?見たことあるのか?見たいか?送ってやろうか!冬木心の体はすごくいいぞ...」木村文俊は下品で嫌らしい言葉を躊躇なく口にした。
北村忠は握り締めた拳が震えていた。
木村文俊が目の前にいたら、一発で殴り殺せるだろう。
「結局何が欲しいんだ!」北村忠は一字一句はっきりと問いただした。
「金だ!」木村文俊も遠回しな言い方を止めた。「今、いわゆる盗作で違約金の借金まみれだ。東京にも居られない。海外に行くしかない。金が必要だ、大金がな!」
「いくらだ?」
「2億円!」木村文俊は率直に言った。
北村忠は歯を食いしばって即答した。「いいだろう!」
「俺の口座に振り込め!」
「先に動画を見せろ」北村忠は強く言った。
木村文俊は冷笑して「なんだ、そんなに冬木心の姿が見たいのか?!」