エレベーターが到着した。
北村忠は道明寺華の玄関まで歩いた。
しばらくそこに立ち尽くしていた。
突然緊張して、ドアをノックする勇気が出なかった。
深く息を吸い、手を上げ、インターホンを押した。
しばらくしてからドアが開いた。
加賀さんが慌てて走ってきて、北村忠を見た瞬間驚いた様子で、「坊ちゃま、どうしてここに?」
「母さんはここにいますか?」北村忠は尋ねた。
「奥様はいらっしゃいます。」加賀さんは深く考えずに正直に答えた。
北村忠は予想通り、母がここに来ているのを確信した。
虎と離れて長い時間が経ち、きっと会いたくなったのだろう。
彼は言った、「母を迎えに来ました。」
「お入りください。奥様と華さまは部屋で虎ちゃんの寝かしつけをしています。坊ちゃまも数日会っていないでしょう、中でご覧になってはいかがですか。」加賀さんは親切に言った。