道明寺華は電話を切り、北村忠と冬木心のことについて考えるのを止めた。
振り向くと、加賀さんが虎を寝かしつけているのが見え、隣のゴミ箱はゴミでいっぱいになっていた。
鈴木知得留が定期的に清掃員を呼んでいるとはいえ、虎がいるせいで家のゴミ箱が足りなくなってきていた。おむつの使用量が多く、ティッシュペーパーも大量に使っていた。
彼女は立ち上がってゴミを片付け、ドアを開けて外に出た。
階段室にゴミを持って行こうとした。
非常口の入り口に着いたとき、聞き覚えのある声が怒って叫ぶのが聞こえた。「北村雅、あなたに言っておくわ。変なことを考えないで。一生、華に息子の潔白を証明させようなんて思わないで。彼が何をしようと自業自得よ。私たちの家族を巻き込んで破産しても当然なの!考えるのも止めなさい。」
広橋香織は電話に向かって怒鳴っていた。
北村雅の声は優しく、「私はいつ華に忠の潔白を証明させようなんて言ったかな。そんなつもりはないよ。何を考えているんだい?ねえ、どこにいるの?どこに行くにしても私が付き添うよ。こんな風に出て行かれると心配だよ。高齢出産だってことを忘れないでくれ。」
「今日誰かと電話で話していたのを聞いたわよ。華にメディアの前で話をさせるのが唯一の方法だって!しばらく私を探さないで。家出したの。探しても見つからないわよ!もう切るわ、忙しいから。」
「広橋香織!」向こうで怒鳴る声。
広橋香織は急いで電話を切り、まだ怒った様子だった。
彼女は振り向いた。
振り向くと、道明寺華がゴミ箱を持って立っているのが見えた。
広橋香織は驚いた。
道明寺華は軽く微笑んで、「おばさん、来てたんですね?」
「虎に会いに来たのよ。」広橋香織もそう笑って答えた。
「ちょっと待っていてください、ゴミを捨ててきます。」
広橋香織は頷いた。
道明寺華はゴミを捨てた後、広橋香織と一緒に家に戻った。
虎は眠っていた。
広橋香織は抱きしめたり、キスしたりして、離れがたい様子だった。
道明寺華はそばで見守っていた。しばらくして加賀さんが虎を小さなベッドに寝かせた。
広橋香織はベッドの横でずっと虎を見つめていた。
道明寺華も横で付き添っていた。
広橋香織が言った。「加賀さんから母乳が出なくなったって聞いたわ。」
道明寺華は頷いた。