夜が更けていた。
金田貫一は車の中に座り、住宅街の周りを走り続けていた。
この時、冬木空と鈴木知得留は家に戻っていた。
冬木空は電話を受け、
相手は恭しく言った。「井上明に会いに来た不審者は誰も見かけませんでした。」
「井上明は外出しましたか?」
「いいえ。」
「引き続き監視を続けてください。」
「はい。」
冬木空は電話を切った。
鈴木知得留は傍らで彼を見つめていた。
冬木空は言った。「気付かれたようだ。」
「誰に?」鈴木知得留は眉をひそめ、「青木晴人?」
「彼にそこまでの知恵はない。金田貫一だ。」
鈴木知得留は頷いた。「どうしましょう?」
「時間稼ぎだ。」冬木空は言った。「井上明を彼らが置いておくはずがない。金田貫一は誰かが背後で監視していることを知っていても、必ず井上明を始末しようとするはずだ。井上明の脅しに屈するわけがない。」