北村忠は熱心に花束を抱え、指輪を手に持って、冬木心のマンションに入った。
冬木心はリビングに座り、スマートフォンを手にしていた。
彼女は自分のニュースを見ていた。ただ黙々と自分のニュースを見つめていた。
半分は同情、半分は疑問の目だった。
彼女は冷笑した。
冷たく笑った。
顔を上げると、北村忠が目に入った。
彼が花束を抱え、指輪を手に持っているのを見た。
その瞬間、冬木郷が見せてくれた北村忠が道明寺華にプロポーズする動画を思い出した。
はっきりと覚えている。北村忠はたくさんの人を呼び、念入りに準備をしていた。そして、道明寺華にキスをする時の彼の熱心さも鮮明に覚えていた。
今、北村忠のこの姿を見ても、少しも興奮はなく、ただ皮肉な気持ちだけだった。
北村忠は冬木心の感情に気付いていないようで、とても興奮した様子で彼女の前まで来ると、片膝をつき、花束と指輪を差し出して言った。「冬木心さん、僕と結婚してください。」
冬木心はそのまま目の前の北村忠を見つめた。
北村忠は笑顔を浮かべ、誠実そうな表情を見せていた。
二人はそうしてお互いを見つめ合った。
冬木心が言った。「北村忠、今の私と結婚するのが正しいと思う?」
北村忠の笑顔が固まった。「どうしたの?」
「今、ニュースがこんな状態なのに、私と結婚すべきだと思う?」
「ニュースはニュースの話で、結婚は私たちの話だよ。」
「今、国中の人が、あなたは同情で私と結婚しようとしていると言っているわ。私はどう考えればいいの?」冬木心は冷たく尋ねた。
「心。」北村忠は立ち上がった。
花束と指輪を脇に置いた。
優しく言った。「考えすぎだよ。私たちは私たちの生活を送ればいい。なぜ他人の言うことを気にする必要があるの?人生は他人に見せるものじゃない。」
「でも今の私には、あなたが同情しているようにしか感じられないわ。」
「僕が何年もあなたのことを好きだったって知らないの?」北村忠は少し興奮して言った。
「じゃあ今、はっきりと言えるの?道明寺華に対して何の感情もないって?」冬木心も興奮していた。
北村忠は突然黙り込んだ。
冬木心は彼を見つめた。じっと見つめた。
彼は躊躇していた。
本当に道明寺華に心を動かされたのか?!
北村忠は言った。「わからない...」