北村忠は唇を噛んだ。
彼は思いもしなかった。道明寺華の心の中で、あの時の自分がそのように思われていたとは。
彼は道明寺華の気持ちなど全く気にかけたことがなかった。自分の行動が彼女を傷つけることになるとか、誤解を招くかもしれないとか、そんなことは考えもしなかった。今では冬木心のことを考えて慎重に接しているのに、それでも彼女の信頼を得られない。これは因果応報なのかもしれないと思った。
冬木心は黙り込んでいる北村忠を見つめた。
彼女は言った。「つまり、道明寺華は私を騙していたの?」
「違う」北村忠は即座に答えた。「確かに道明寺華とは同じベッドで寝たけど、何も起こらなかった。キスだって2回しかしていない。一度は同居した時、もう一度はプロポーズの時。それだけだ。それ以上の関係はなかった」