第523章 虎のことに関して、考える余地はない(3)

病室の中で、冬木心は興奮気味に話していた。

北村忠が口を開く前に、加賀さんが落ち着きを失った。

彼女は激しく言った。「冬木お嬢様、あなたは少爺様と自分の子供を作るべきです。どうして華の子供を奪おうとするのですか。母親になったことのない人には分からないでしょう。子供が母親にとってどれほど大切なものかを!」

冬木心の表情が暗くなった。

子供を産むこと……

もう彼女には子供が産めないのだ!

これからずっと産めないのだ。

産めないからこそ、虎を自分たちの側に置いておきたかった。実の子のように育てるつもりだった。

そうすれば、彼女と北村忠の関係も良くなり、子供がいないという傷も癒されるはずだった。

彼女はこの考えに何の間違いもないと思っていた。全ての人にとって良いことだと。彼女にとっても、北村忠にとっても、虎にとっても、そして道明寺華にとっても。

道明寺華はまだ若い、また結婚できる。子供がいなければ選択肢も広がる。

なぜ皆にとって良いはずの方法が、いつも否定されるのだろう。

彼女は北村忠に向かって強く言った。「私は本気です。考えてみてください。」

「考える余地はない。」北村忠は一字一句はっきりと言った。「何でも君の言うことを聞くけど、虎のことだけは、絶対に道明寺華から奪うようなことはしない。絶対に!」

冬木心の喉が動いた。

北村忠はやはり道明寺華のことを気にかけているのだろう。

彼女は冷笑した。「北村忠、私の気持ちを考えたことはありますか?なぜ私が虎を私たちの側に置きたいのか、考えたことはありますか?」

北村忠は言った。「申し訳ない。考えられない。虎のことに関しては、他のことは一切考えたくない。」

冬木心は冷たい目で彼を見つめた。

北村忠は率直に言った。「これ以上この話題は続けたくない。」

口調は強くなかったが、冬木心は北村忠の決意を感じ取ることができた。

冬木心はその時、感情を抑えた。

今北村忠と喧嘩しても意味がない。北村忠には全く分からないのだ。虎を側に置くことが、彼らにとってどれほど良いことなのか!

虎は点滴が終わると、すぐに熱が下がった。

すぐに37.5度まで下がった。

断続的にまた上がったが、38.5度までは行かず、物理的な治療の後、37度前後で安定した。