第558章 息子が生まれた(その1)

「北村雅、この亀野郎!」分娩室から、広橋香織の歯ぎしりする呪いの声が突然響いた。

廊下にいた全員が凍りついた。

北村雅もその瞬間、明らかに困惑した様子だった。

北村雅に帝王切開の必要があるか確認しに行こうとした看護師も、その時思わず小さく笑った。

彼女は北村雅の方を向いて言った。「産婦さんの様子を見る限り、帝王切開の必要はなさそうですね。」

北村雅は黙り込んだ。

彼もそれ以上何も言わなかった。

看護師は北村雅が何も言わないのを見て、その時は中に入らなかった。

そうこうするうちに。

分娩室から看護師が一人出てきて、「北村夫人が出産されました」と告げた。

こんなに早く。

さっきまで死にそうな様子だったのに、今はもう産まれたなんて。

北村雅はじっと看護師を見つめた。「今、赤ちゃんに服を着せているところです。すぐにお連れします。」