リビングにて。
広橋香織は突然固まってしまった。
道明寺華とJoeが階段を降り、二人は広橋香織の方へ歩いていった。
「おばさん、私はもう帰ります。虎が目を覚まして泣いたら、加賀さんにもう少し哄んでもらってください。別れの時期は必ずあるものです。過ぎれば大丈夫になりますから……」道明寺華が言った。
そう言いながら、広橋香織の表情がおかしくなっているのに気づいた。
彼女はそこに立ち尽くしたまま、道明寺華をじっと見つめていたが、彼女の言葉は一言も耳に入っていないようだった。
「おばさん、おばさん、どうしたんですか?」道明寺華は少し興奮気味に呼びかけた。
北村雅も横で広橋香織の様子がおかしいことに気づいたようだった。
その時、床に広がる水たまりに目が留まり、心臓が激しく鼓動し、血圧がぐんぐん上昇するのを感じた。