第572章 北村忠、お前は皆の厄介者(3)

手を伸ばしても五指が見えないほどの暗闇だった。

十分後に出発する。

北村忠は地面に横たわり、痛みで死にそうになっていた。今はただ眠りたい、完全に眠り込みたいと思うばかりだった。

道明寺華と上野和明は少し離れた場所に座り、絶対的な静けさを保ちながら、誰かが近づいてこないか警戒していた。

この時、冬木空も鈴木知得留の側に戻ってきた。

鈴木知得留は冬木空の手をしっかりと握っていた。

冬木空は彼女を抱きしめた。

彼女は言った。「私はずっと弟に希望を持っていたの」

「分かっている」

「次に会ったら…」鈴木知得留は喉を動かし、「容赦しないで」

冬木空は彼女を抱きしめた。

彼は彼女の罪悪感を理解していた。

また、鈴木知得留が弟にチャンスを与えた理由もよく分かっていた。

血のつながった家族だからだ。