手を伸ばしても五指が見えないほどの暗闇だった。
十分後に出発する。
北村忠は地面に横たわり、痛みで死にそうになっていた。今はただ眠りたい、完全に眠り込みたいと思うばかりだった。
道明寺華と上野和明は少し離れた場所に座り、絶対的な静けさを保ちながら、誰かが近づいてこないか警戒していた。
この時、冬木空も鈴木知得留の側に戻ってきた。
鈴木知得留は冬木空の手をしっかりと握っていた。
冬木空は彼女を抱きしめた。
彼女は言った。「私はずっと弟に希望を持っていたの」
「分かっている」
「次に会ったら…」鈴木知得留は喉を動かし、「容赦しないで」
冬木空は彼女を抱きしめた。
彼は彼女の罪悪感を理解していた。
また、鈴木知得留が弟にチャンスを与えた理由もよく分かっていた。
血のつながった家族だからだ。
家族だからこそ、簡単には切り捨てられない。
彼が弟と交換しに行った時、鈴木知得留は彼の耳元で「鈴木友道に気をつけて」と告げた。
彼女は実は弟がもう自分の味方ではないことを知っていたが、それでも彼を取り戻したいと思っていた。
彼は彼女の全ての感情を理解していた。
そして彼は彼女との約束を、できる限り果たそうとしていた。
二人はしばらく寄り添っていた。
冬木空は時計を確認して、「行こう」と言った。
全員が地面から立ち上がった。
北村忠も必死で這い上がろうとした。
本当は少しも動きたくなかった。
立ち上がると、足が折れそうな痛みを感じた。
今夜どれだけ歩かなければならないのかと考えただけで、彼は崩壊しそうになった。
思わず不平を漏らした。「どこかに隠れて、明日の朝に出発するというのはダメですか」
「ダメだ」冬木空は即座に拒否した。
「足が痛いんです」北村忠は哀願した。
「自業自得だ」この言葉は上野和明が言った。「さっき来るなと言ったのに無理やり来て、今度は足手まといになるとは」
北村忠は顔を上げられなかった。
彼は黙り込んだ。
上野和明は確かに北村忠に敵意を持っていた。
道明寺華が北村忠との間で経験したことを知っており、華を困らせたくないという思いから今まで追及しなかっただけで、今彼と向き合えば、当然優しく接するはずがなかった。
一行が暗闇の中を歩き始めようとした時。
道明寺華が突然「誰かが付いてきている」と言った。