第572章 北村忠、お前は皆の厄介者(3)

手を伸ばしても五指が見えないほどの暗闇だった。

十分後に出発する。

北村忠は地面に横たわり、痛みで死にそうになっていた。今はただ眠りたい、完全に眠り込みたいと思うばかりだった。

道明寺華と上野和明は少し離れた場所に座り、絶対的な静けさを保ちながら、誰かが近づいてこないか警戒していた。

この時、冬木空も鈴木知得留の側に戻ってきた。

鈴木知得留は冬木空の手をしっかりと握っていた。

冬木空は彼女を抱きしめた。

彼女は言った。「私はずっと弟に希望を持っていたの」

「分かっている」

「次に会ったら…」鈴木知得留は喉を動かし、「容赦しないで」

冬木空は彼女を抱きしめた。

彼は彼女の罪悪感を理解していた。

また、鈴木知得留が弟にチャンスを与えた理由もよく分かっていた。

血のつながった家族だからだ。

家族だからこそ、簡単には切り捨てられない。

彼が弟と交換しに行った時、鈴木知得留は彼の耳元で「鈴木友道に気をつけて」と告げた。

彼女は実は弟がもう自分の味方ではないことを知っていたが、それでも彼を取り戻したいと思っていた。

彼は彼女の全ての感情を理解していた。

そして彼は彼女との約束を、できる限り果たそうとしていた。

二人はしばらく寄り添っていた。

冬木空は時計を確認して、「行こう」と言った。

全員が地面から立ち上がった。

北村忠も必死で這い上がろうとした。

本当は少しも動きたくなかった。

立ち上がると、足が折れそうな痛みを感じた。

今夜どれだけ歩かなければならないのかと考えただけで、彼は崩壊しそうになった。

思わず不平を漏らした。「どこかに隠れて、明日の朝に出発するというのはダメですか」

「ダメだ」冬木空は即座に拒否した。

「足が痛いんです」北村忠は哀願した。

「自業自得だ」この言葉は上野和明が言った。「さっき来るなと言ったのに無理やり来て、今度は足手まといになるとは」

北村忠は顔を上げられなかった。

彼は黙り込んだ。

上野和明は確かに北村忠に敵意を持っていた。

道明寺華が北村忠との間で経験したことを知っており、華を困らせたくないという思いから今まで追及しなかっただけで、今彼と向き合えば、当然優しく接するはずがなかった。

一行が暗闇の中を歩き始めようとした時。

道明寺華が突然「誰かが付いてきている」と言った。