第583話 北村忠は道明寺華のことが好きだった(その1)

中央私立病院。

鈴木知得留のお腹は目立つようになり、中の小さな命は順調に育っていた。

事故が起きた直後の検診では、胎児が少し小さめだと医師に言われたが、深刻ではなく、約2ヶ月の療養を経て、赤ちゃんの全ての指標は正常範囲内に収まっていた。

鈴木知得留の血色も2ヶ月の養生で随分良くなっていた。

医師は、いつでも退院できると言った。

しかし彼女はまだ退院していなかった。

冬木空がまだ目覚めていないからだ。

だから彼女は離れなかった。

毎日目が覚めると、最初にすることは彼に会いに行くことだった。

彼がまだベッドに横たわり、生命の息吹を外部の機器に頼っている姿を見るのだった。

彼の傷はほぼ治っていたが、本当に肉を噛みちぎられた部分は、新しい肉が非常にゆっくりと、ゆっくりと生えてきていた。