中央私立病院。
鈴木知得留のお腹は目立つようになり、中の小さな命は順調に育っていた。
事故が起きた直後の検診では、胎児が少し小さめだと医師に言われたが、深刻ではなく、約2ヶ月の療養を経て、赤ちゃんの全ての指標は正常範囲内に収まっていた。
鈴木知得留の血色も2ヶ月の養生で随分良くなっていた。
医師は、いつでも退院できると言った。
しかし彼女はまだ退院していなかった。
冬木空がまだ目覚めていないからだ。
だから彼女は離れなかった。
毎日目が覚めると、最初にすることは彼に会いに行くことだった。
彼がまだベッドに横たわり、生命の息吹を外部の機器に頼っている姿を見るのだった。
彼の傷はほぼ治っていたが、本当に肉を噛みちぎられた部分は、新しい肉が非常にゆっくりと、ゆっくりと生えてきていた。
彼はとても痩せていた。
食事ができず注射に頼らざるを得ず、最低限の栄養しか確保できず、毎日このように横たわっているため、新陳代謝は遅くなり、身体機能も徐々に萎縮していった。
医師は、2ヶ月も昏睡が続いているため、意識を取り戻すのは難しいと言った。
心の準備をするように言われた。
実は彼女はすでに全ての心の準備はできていた。彼女にとって、冬木空が生きているだけで、目の前にいてくれるだけで十分だった。
以前はいつも彼が彼女の面倒を見ていたが、これからは彼女が彼の面倒を見ればいい。
彼女は自分の感情を最良の状態に調整した。
毎日彼に話しかけ、赤ちゃんの様子を伝え、毎日体を拭き、マッサージをしていた。
彼女は冬木空がこうして生きているだけでも恩寵だと感じていた。奇跡を期待しなくても、これからの人生を支えていけると思っていた。
彼女が受け入れられないのは、ただ冬木空がいなくなってしまうことだけだった。
この世界に、もう二度と冬木空という人がいなくなることだけだった。
鈴木知得留は冬木空の頬にキスをした。
あれほど美しく端正だった顔が、長期間日光に当たらず、長期の昏睡により、顔色は蒼白くなり、さらに狼犬に襲われた箇所に残った傷跡もあり、今では当時の輝きは完全に失われていた。
彼女は彼の頬にキスをして離れる時、わざと「冬木空、あなた醜くなったの知ってる?うん、とても醜いわ。これからは女の子にモテなくなるわよ」と言うのだった。