個室の中。
相変わらず薄暗い空間。
誰も誰の顔をはっきりと見ていなかったかもしれない。
あるいは、彼女の視線は取るに足らないウェイターには向けられなかった。
個室の中で、一人の女性がグラスを受け取りながら言った。「私は女性と付き合うのが本当に苦手なんです。女性は小さなことにこだわりすぎると思うし、特に日本国の女性は昔からわがままですから。でも咲子さんとは一目で意気投合しましたね。さすが女性実業家の名は伊達じゃない。さあ、この一杯を!」
斎藤咲子は微笑んで、「お褒めに預かり光栄です。乾杯」と返した。
二人は続けて何杯か飲んだ。
Linaは数曲歌った。
斎藤咲子も少しの間一緒に歌った。
Linaはお酒を飲みながら言った。「こうして座っているだけじゃ退屈ですね」
斎藤咲子は今やビジネスの世界で様々な人々と接してきたため、すぐにLinaの意図を理解した。
Linaは今年で40歳近く、海外で結婚し、夫も海外におり、息子も現在海外にいる。
この女性と契約を交わす際に調べていたが、彼女は長年夫と別居しており、二人の関係は名ばかりで、お互い好き勝手な生活を送っていて、あまり度を越さない限りは黙認し合っているという状況だった。
斎藤咲子は急いで傍らに立っているウェイターを呼んだ。
ウェイターが恭しく近づいてきた。「ホストを何人か呼んでください。ダイヤモンドクラスで」
ホストにも多くのランクがあり、ダイヤモンドクラスは最高ランクで、通常VIP個室でしか利用できない。
「かしこまりました」
斎藤咲子はさっとチップをウェイターに渡した。
ウェイターは喜んで立ち去った。
村上紀文はこの時もずっと地面に屈んでお酒を注いでいた。
個室は薄暗く、彼も頭を下げていたため、斎藤咲子は彼に気付いていないようだった。
しかし彼はその瞬間、斎藤咲子の言葉一つ一つを聞いていた。
彼は何の感情も示さなかった。
ただ冷淡に自分の仕事をしているだけだった。
彼は思った。おそらく一晩中、彼女は自分に気付かないだろうと。
しばらくして。
8人のホストが来た。
全員がフォーマルな服装で彼女たちの前に現れた。
Linaはホストたちを見て微笑んだ。
斎藤咲子という女性は本当に賢く、彼女が何を求めているのか完全に理解していた。